
ポートランドで大論争を呼んでいる新設トラムに試乗してきました。このトラムはウイラメット河畔のサウスウオーターフロント再開発地域からダウンタウン南に位置する山のてっぺんにあるオレゴン・ヘルス・サイエンス・ユニバーシティー( Oregon Health Science University - オレゴン医科大、以下OHSUと略します。)を3分20秒ほどで繋ぐ総工費5700万ドル、年間運営費200万ドルの高級交通手段です。
トラム論争の焦点は、巨額の建設・運営費用がかかり、税金が導入される公共交通手段であるにも関わらず、OHSUなどごく一部の人々の足としてしか利用されないこと。そして、トラムが通過する地域住民への交換条件として提示されていた公約がなされず、また住民プライバシー対策がないこと。
このトラムは2002年に地元ポートランド市民からの反対運動があったにも関らず市議が可決した後、当初の建設費用1500万ドル(約17億円)から、2007年1月時点資料によれば、5700万ドル(約62億円)までの跳ね上がったもので、年間運営費用も当初見積もりの倍以上、年間200万ドル(約2億4400万円)かかるとのこと。
総工費と運営費の85%はOHSU、残り15%は市税でまかなわれる予定ですが、このトラムをOHSUに関係のない人々がどこまで利用できるのか、トラムの乗降地点までの移動手段、各地点の駐車場建設、近辺の交通渋滞回避対応策が、トラム建設と同時進行しないこともあり、地元住民が形成するアソシエーションではすでに交通量増加による道路整備・交通渋滞について、どのような処置が可能であるかが議題として挙っています。
ちなみに運賃は当初1ドル70セント予定でしたが、2007年1月時点で4ドルまで上昇しています。
既存の交通機関であるトライメットが運行しているバスを増発するほうが山頂に位置する他病院群シュライナーズ病院、ドーンベッカー小児病院、退役軍人のためのベテランズ病院などへの移動面でも費用面でも一般客には説得力がある方法ではあります。
が、山の上は土地スペースが限られるため大学病院施設の増設が難しく、関係施設従業員の駐車場が十分に確保できないことは長年の悩みでした。
ポートランド市の発展手段としてOHSUに新しい土地と便利な交通手段を与えることにより、結果として市の財政を助けることになる。。そして、最低でも6000の新しい医療関係職のポジションを設けることにより、職業安定の意味でもよい効果を生むであろうというのがポートランド市からの説明であったわけですが。。
空中を動かすトラム建設でなく、地面を動かすレール式の車を導入する安全案もいつの間にかなくなってしまいました。
開発途上のサウスウオーターフロントから、西海岸の大動脈ハイウェイである5号線、ナイトー・パークウエイという大きな交通量の多い通りと、さらにバーバーブルバード通り、それにトウィリガー、つまり計4本の幹線道路の真上と住宅街の上を通過するトラムを動かしてまでOHSUの便宜を図る必要があるのかどうか。また、このトラムは風速50マイル時になったら、運行停止以外に安全策がありません。
実際に片道3分20秒ほどのトラムに乗ってみると、まず公表されている定員78名というのは、
乗客が全員立って乗った状態のことのようです。丸みを帯びた形のトラムの中にはつり革はありませんし、窓にそった手すりにつかまって寄りかかると、ぐっと体がしなるような体勢になるため、高所恐怖症の方にはお勧めできません。折りたたみの小さな簡易椅子が7つ内壁に接続されている
だけでした。5700万ドルのトラムには暖房はありません。
乗降場所では床のコンクリートとトラムのドアの間に小さな溝ができているのでアクセスはありますが、今後病院へ通うであろう車椅子や杖をついた患者さん達は路面電車に乗るよりももう少し足元に気をつけることになりそうです。
景色は高所恐怖症でない限り、綺麗だと思います。
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ポートランド周辺地域は、1990年に広域政府メトロによって発案された50年間に渡る都市開発プラン「リージョン2040」のユニークさ、そしてその計画の慎重さゆえに、全米でも類をみない抜群の都市計画を持った地域のひとつとして高い評価を受けてきました。それがなぜ、住民の大反対を押し切るようなプランを推し進め得たのか、トラムはポートランドが誇るミステリープロジェクトと称して過言ではないでしょう。
トラム写真が載っているページがありますので、ご参考までに。
http://en.wikipedia.org/wiki/Portland_Aerial_Tram
http://www.oregonlive.com/pdfs/special/oregonian/Tram_CarDiagram.pdf
りえ
*著者紹介ー ポートランドダウンタウンの南、ポートランド市レアヒル地域在住。OHSUトラム設置においてプライバシー侵害など実質的な生活面におけるマイナス面を懸念する一人。
*アズマノインターナショナルからのお願い*
今回の記事は通常、観光地などの紹介が多いアズマノインターナショナル社の紹介記事に、ポートランドが抱える疑問視すべき観点、また視察としての材料として読者のみなさんに紹介すべく、特別掲載したものです。りえ氏の意見は弊社の企業ポリシーとは無関係ですので、ご了承ください。